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これ以上は危険だと思ったのか、彼は帽子を諦めて岸へ戻ろうと数歩歩いた。
しかし足をつってしまったらしく、その場所からこちらに戻ってくる気配はない。
溺れそうになりながらも彼は私に何かを伝えようと必死で何かを喋っているが口を開く度、息をする度に口の中に水が入り、その苦しさでもがく手足が水面を叩いて雑音を発しているので私には何を言っているのかうまく聞き取れない。
暫く見ていると先程までバシャバシャと不快な音を立てていた辺りが静まった。
此処は私達の屋敷の裏の大きな森をずうっと行って抜けたところにあり、私の知る限りでは私と浅佳しか知らない場所だ。
誰が来る気配もなく、辺り一帯が静寂に包まれている。
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