壱(前編)

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「浅佳、」 呼び掛けても返事は返って来ない。 私はゆっくりと彼のいる場所へ近付く。 かなり深いが顔を上に向ければギリギリ息はできるくらいの水嵩。 彼を引きずって岸に上げると、声を掛けても返事はしないし、頬をひっぱたいても動かない。 こんな状態の浅佳を非力な私が屋敷まで運ぶ事は到底できないので私は一旦お屋敷まで戻り、執事を一人川辺へ連れて来た。 動かない浅佳を見た執事は驚いた顔をして浅佳の手首にふれた。 そして浅佳の胸を上から何度か押し、再び手首にふれる。 そして一気に顔色が悪くなり、絶望的な表情で浅佳を抱えて屋敷まで走った。 取り残された私は何があったのか、当時は知る由もない。 私はそのまま一人でいるのもつまらないので屋敷へ帰る事にした。  
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