海を知った日

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物悲しい。こう言えばあなたに伝わるのか。いや、あなたはさほど俺に興味がないから、適当に分かったふりをするんでしょう。それを分かってしまう自分が嫌いじゃない。だってあなたのこと、凄く好きって感じがするから。好きな感じっていうか、好き、なんですけど。勿論、LOVEの方ですよ。LIKEじゃなく。 別にあなたのこと、どうこうする気はさらさらないです。本当に。神に誓って。絶対に。単純に、俺はあなたが好き、あなたにLOVEですよって、言いたかっただけなんです。ねぇ、頭を悩ませるほどのことじゃないでしょう?いや、俺は悩みましたけどね。だってあなた、男ですし。しかも一般的な観点から見たら全然可愛くないですし。口も悪いですし。言いたいこと、案外ずばずば言いますよね、あなたは。俺はそんなあなたが愛しくてしょうがない今日この頃なんですけどね。 「ほんと、なんででしょうね」 よどみなく流れ出た言葉は寸分違わぬ俺の本音。あなたは時折視線を泳がせながらもすべて聞いていてくれた。 耳が少しだけ赤みを帯びているのには、気付かないふりをしてあげましょうかね。 「なんなの、いきなり」 「いやぁ。自分でも分からないので、意見を頂戴しようかと」 「………人選ミスでしょ、明らかに」 「そうですねぇ」 素知らぬふりをする俺を腹立たしげに見つめる目には、困惑が湛えられている。どうして。なんで。そう問い掛けている。 すみません。この気持ちを殺してしまうことは、俺には出来ない。 「…俺は、このまま終わらせるのが、嫌なんですよね」 「……だから、俺に、」 「そう。だから、あなたに」 終わらせて、もらおうかなって。そう思ったんです。 告げた瞬間、笑おうとして上げた口角が引き攣る。あなたの目から大粒の涙がひとつだけ、嘘みたいにきれいに零れた。 「っ、え、」 「お前さ、ずるい。俺の、俺の話も、聞いてよ」 俺がずっとずっと隣にいる男を馬鹿みたいに好いてる話も。 無理して笑ったあなたの目からまた涙が零れるより先に、俺は愛しい人に手を伸ばした。
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