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どこかで犬が吠えている。深夜の公園、明かりが少ない。ブランコで揺れる俺は、まるで不審者。
携帯を開く。液晶の眩しさに目を細める。ああ、日付が変わってる「ちっ」俺の舌打ちが、一際大きく響いた。それと同時にじゃり、土を踏み締める音。肩に置かれた手を振り払う。
「お前そんな薄着で、馬鹿だろ」
「じゃあそのコート寄越せ」
「それは断る」
「ちっ」
また盛大な舌打ち。両手を擦り合わせるも、そう簡単に熱は生まれない。吐き出した息は白く空気中に漂う。空いていた隣のブランコに腰掛けた奴はといえば、平然としていた。その黒いコート、剥ぎ取ってやろうか。
俺の視線をなにか勘違いして微笑む奴。少しも躊躇わずに左の頬を平手打ちすると、奇声を発した。
「そもそも呼び出したの、お前だろ」
「いやぁ、まさか来るとは」
「暇だった。金もないし、パチンコ出来ない」
「俺とパチンコ、どっちが大事よ?」
「パチ」
「皆まで言うな、傷付く」
「あっそ。で、なに」
きぃ、きぃ。ブランコを揺らせば、間抜けな音。寒さから逃れたくて身体を動かすけれど、風が生まれて余計に寒くなった。
ふと、空を見上げる。東京のくせに、今日はやけに星が綺麗だ。
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