うずくまる

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不健康な青白さは、暗闇の中でやけに目立つ。まるで発光体のよう。深い眠りに落ちているのか、ぴくりとも動かない。ああ、死んでるみたいだな。 左胸に耳をくっつけて、心音を確認する。とくん、とくん、心臓が一定の間隔で鳴動する。なんだ。生きてる。でもやっぱり、青白い肌。 こいつはいつも、俺より先に眠る。ふたり一緒に眠りにつけたらいいのに。そんな女々しいことを思う。だけど俺は、眠れない。 他人の心音を聞くと心地好く眠れると誰かが言っていた。とくん、とくん、変わらぬリズム。こいつは、生きてる。何故だか余計に眠れなくなってしまった。 午前三時。俺は自分一人になったような錯覚を起こす。不安、不安。なぁ、もう俺、お前の寝息、聞き飽きた。 ぎゅっと強く、目をつむる。チカチカ、明滅する瞼裏。青白く死人めいた肌が、脳裏に焼き付いて離れない。腕が、指先が、紫色に変色して、それで、心臓はぴたり、止まる。 ぐるぐると回る厭なイメージを振り払えない。平和な寝息は、すぐそこで、聞こえているのに。 気が付けば午前四時。明るくなる空を窓越しに感じながら、ひっそりと、泣いた。 (俺の涙を、お前は知らない)
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