「困惑」

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「兄さん…」 朝倉は希乃が千里眼の範囲から抜けたのを確認するとそのまま固まっている陸人を見た 「…くそったれが」 陸人はそう呟くと銃を下ろしジャケットにしまうと口からタラリと血を流した 「…兄さん」 「気にするな、俺は大丈夫だ。それより…」 陸人は口元についた血を拭いながらそう言うとそのまま血を大量に撒き散らして倒れている有沙を見た 昨日も見た光景 昨日も助けるのが間に合わなかった 今回も… 「…くそったれが」 陸人はもう一度そう呟くと拳を握る力を強くし、爪が肉に食い込んでポタポタと血が流れた 俺は…あの頃と何も変わっちゃいない… 「にっ兄さん!!ちょっと来て!!」 「…どうした」 朝倉の慌てた様な呼び掛けに陸人はそう答えると空と有沙の方を見た 「傷が…癒えていく…」 「なんだと?」 朝倉の言葉を聞いて陸人は倒れている有沙の方へと駆け寄ると確かに傷がどんどん癒えていっていた 地面一面に広がる血がズルズルと有沙の体内に戻っていき 肉がえぐれた場所も筋肉、皮、とみるみる癒えていく 「これは…昨日のと同じ…」 陸人はそう呟くと徐々に呼吸活動も初めて出した有沙を見て背筋を凍らせた 「コイツ…本当に人間か?」
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