「狂犬」

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「どうやらその魔眼は極度の殺意や死の感覚に反応して発動するみたいだな。ならむやみに殺意をぶつけるのはあまりいい策じゃないな」 陸人は壁にもたれる様に立ちながらそう言うとフゥとため息をつき、言葉を続けた 「お前、本当は何者だ?」 先程と同じ質問、だが先程とは全く違う感じだった 先程の様な殺意の重圧は無い、それどころかどこか温かい言葉だった 「…ゴメン、本当に解らない」 その言葉に対し、有沙は少し申し訳なさそうにそう言うと陸人は「そうか」と有沙の表情と声から何か感じ取った様に一言呟き、壁に手をつきながら扉の方へ向かい、扉の前で止まり振り返った 「それならお前は俺達にかかわるな、お前は殺された事によってもう参加者とは思われないだろ。これから俺達を見つけてもけして近づくな、そうしていればお前はもう死なずに済む」 陸人はもう死なずに済むとは変な言い方だかな、と続けてそう言うとドアノブに手を伸ばし扉を開けた 「じゃあな、傷が癒えたからといってもまだわからねぇから安静にしてろよ」 陸人はそう言いながら後ろ向いたまま手を振り、そのまま部屋から出ていくと続けて朝倉もチラリと一度有沙を見て出て行った
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