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狂気と狂喜と凶器
「はぁはぁ…」
公園に入り辺りを見渡す。寂れた園内に錆びたブランコが風を受けて微かに軋む。
僕は迷わず奥に進む。周りに木々はない。それでも彼女がいると信じて。
「……、此処だよね、物語が始まったのは」
目の前には小さな花が咲いていた。
「…やっと、やっと逢えた。私は、凄く遠く永く待ってた……」
後ろを振り返ると生徒会室から帰って行った彼女が笑っていた。
僕は後ずさりしながら言った、
「姉さん……、久しぶりだね」
彼女、姉さんは微笑むと腰に手を当てる。
「久しぶり、私の愛しき弟。ずいぶんと会わないうちに成長したわね」
姉さんは一歩ずつ歩み寄る。確かで不確かな足どりで。
僕は姉さんに合わせるように一歩ずつ後ずさる。背筋には冷たい汗が流れ落ちる。
「どうしたの? 私のことが嫌いに
「姉さんは、姉さんはもう死んだんだ!」
「えぇ、でも今を生きているわ。すぐに消えてしまうけれど…」
「さぁ、愛しき弟よ。物語を紡ぎましょう。私と永遠に」
姉さんは僕の一歩手前まで走り腰に隠してあった果物ナイフを水平に突き出した。
僕は反射的に後ろに跳んだが間に合わなかった。
痛みが左脇腹から伝わってくる。意識が徐々に失われていく。目の前には狂喜に歪んだ姉さんの顔があった。
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