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始終の時
「ねえちゃん、まってよぉ」
「おそいわよ、もぉはやくしなさい」
幼い頃に二人で遊んだ公園。見渡せば青々とした木々が立ち並び、花壇には色々とりどりの花が植えささっている。
「ここにお花のたねをうえるから、穴をほってね」
僕は手に持っていた移植ごてで小さな穴を掘る。
「よし、ありがと」
姉さんは穴に小さな花の種を入れる。僕はその上に土を被せて姉さんを見る。
「ねえちゃん、その花のなまえはなんなの?」
「このお花はね、ひがんばなって言うの。花ことばは再開みたい」
「へぇ~。ものしりだね、ねえちゃんは」
「当たり前よ。あなたのお姉ちゃんなんだから」
姉さんは無邪気に僕を見て笑う。つられて僕も笑う。ずっとこの時間が続けば良かったと思った。
「さてと、帰るわよ。ちゃんと手をはなさないでついてきなさい」
「うんっ」
姉さんは僕の手を引いて公園を走る。公園の入口に車が停めてあったから、姉さんは車を避けて車道に出た。
そして、僕と繋いでいた手が離れた……。
僕は姉さんの姿を捜した。すぐに見つけられた。辺りが赤くなっていたから…。姉さんに駆け寄ると誰かに目を塞がれた。
その手を引っ掻き解放すると、僕は姉さんに抱き着いた。姉さんの瞳が微かに開く。
「……また、ここで会ぉ、ね。お花が、さいたら……」
それっきり姉さんは何も言わなかった。僕はただ、大人の人に従って茫然としていた。
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