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冷たい冷たい雨が降る。
まるで、この地でついさっきまで行われていた醜い争いを戒めるように、その雨は降り続ける。
その戦場には、数十人の年若い兵士と、戦闘に巻き込まれた村人達が立っていた。
荒れ果てた田畑、倒壊した家屋、火の手があちこちで上がり、逃げ切れなかった人や家畜達が無惨な姿で倒れ伏して居る。
しかし、今彼等の目に映るのは一人だけだった。
その者は、倒れ伏す一人の少女の側で、ただ佇んでいた。
「………」
そしてその者は、何も言わず消えてしまった。
一振りの剣を残して……
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