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「カズマ! 行くぞ!」
俺はまた強引にカズマを引っ張り出し、喚き藻掻くのを無視しながらパイプを振るう。
流石完熟しているだけの事はある。
桃人間共は一発パイプに当たる度に、有り難くも迷惑だが肉片をお裾分けしてくれた。
心臓が止まってる様なんで、血が噴出しないのが不幸中の幸いだ。
血塗れで鉄パイプ振り回す男二人なんて絵面が悪過ぎる。
悪人っぽさ全開で目も当てらんねえよ。
「離せ、この、裏切り者! お前もユヅキもこいつらも、皆みんな化け物だ!」
「それで良い! 化け物で良いから、逃げるぞ!」
カズマの襟首を掴んで、俺は全力で暗い通路を走り抜ける。
薄く開いていた扉を越えた瞬間、先程俺がしたのと同じ様に、ユヅキが舌打ちした気がした。
助けて、と言ったお前を助けてやれなくて済まない、ユヅキ。
だが俺は、桃人間共とお友達になっちまったお前と、仲良く出来る気がまるでしねえんだ。
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二階フロアは目を覆いたくなる程の大混雑っぷりだった。
あの階段のバリケードを突破してきたらしいミイラ共と、あの通路以外のどこからか沸いて出て来たらしい完熟桃人間共でごった返している。
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