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死んだ様に動きを止めるそれらのある場所では、しかし生命が育まれていた。
白く小さく蠢いている。
蛆虫じゃねえか。
俺はそいつから離れたくて、つい反射的に顎を打ち上げる。
ゾンビから図らずも収穫してしまった胸の肉が、パイプの内を伝い落ちて、俺の手に零れた。
ブチャビチャッ、排水溝より嫌な臭いだ。
手を払って肉を落とすが、強烈な悪臭までは離れてくれず、俺は諦めて悪臭を放ちながらぬるぬる滑る手でパイプを再び振った。
「うわあぁぁぁあああ!」
カズマの声が遠くから聞こえる。
顔を上げるとカズマは既に出口付近にまで辿り着いていたが、追及の手を緩めないゾンビを必死で撃退している最中だった。
出口まで後一歩、しかし出口に背を向け、目を見開き、ゾンビを頭から叩き割っている。
ごしゃっ、ぐしゃっ、頭蓋骨が砕けていく。
大振りな一撃を放つ毎に小休止を入れるカズマからは、力の限りに殴り続けていたらしい満身創痍っぷりが見て取れた。
心配には及ばないが、俺もここから脱出するべく、出口へ急ぐ。
しかし俺は足を止めてしまった。
カズマの後ろに、有り得ないものを見てしまったのだ。
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