短編その3

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「あのー…ごめんくださーい」 日曜の午前5時…一人暮らしの俺には新聞なんぞ読む金銭的余裕は無いぞ。 「新聞なら間に合ってますんで…おやすみ…」 「新聞!?先輩!ボクですよ~!開けてください!」 あぁ、大学の後輩の東屋さんなのか。 2年の秋に入った同人サークルで、いきなり俺に懐いてきた。 …理由は俺の書く絵が好きなんだとか。泣きたくなる程の絵の下手さなのに。 そんな俺にプロ並みの技術を持った東屋が懐く…なんでだろう? 「先輩ーっ!いい加減中に入れてください!」 「ちょっと待ってろ」 そして、毎週のように俺の部屋で向かい合って絵を書いている。 一緒に書き始めた頃に、俺も絵が上手く書きたいから東屋に教えてもらおうとすると 「そんな…先輩はそのままの先輩でいてください」 そんなことを濁った目で言うもんだから、それ以来聞いていない。 「先輩先輩!!今回のCG書き終わりましたよ!」 「せーんぱーい、膝枕してください」 …しかし、出会った頃は物凄く暗い女の子だったのに2ヶ月半ほどで明るく笑うようになったな。 「ところで今日は何をするんだ」 「後のお楽しみです☆」 なんて、今度は顔を真っ赤に染めて目をキラキラさせながら笑う。 いろんな意味で変わった女の子だな。
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