短編その1

2/3
前へ
/81ページ
次へ
「田中くん、一緒に帰ろっ!」 「…おう」 俺がこの女子---篠山に付き纏われ始め、もう一ヶ月。 きっかけは、同じクラスになったその日だった。 「田中君、付き合って下さい!」 進級し、新しいクラスに変わったその日の放課後に篠山に告白された。 前髪で目は隠れてるものの、時折見れる顔は相当な美女との噂。 てか、俺みたいな不良に告白……こだわりの無い俺には断る理由も無かった。 「俺みたいな奴で良いなら、よろしくな」 その日は当然、途中まで一緒に帰った。 カップルになって三日後の朝、俺は珍しく篠山より早く教室に着いた。 「あっ、田中!私より早いなんて珍しいな!」 中学の頃から、特に仲が良かった三好。 女子テニスの朝練で、朝は確実に俺より早かった。 「私の予想だと、明日は雪かな?」 「アホか」 「ははっ!それじゃ、わたしゃ自分の席に戻るね」 相変わらずテンション高い奴だな。 いやまぁ、嫌いではないが。 「授業が終わるまで寝るか---ッ!?」 一瞬だけだが、背筋に悪寒が走った。 同時に視線も感じた。 「(誰だ……?)」 周りを見回したが、誰も俺のことを見てはいなかった。 「(……気のせいか?)」 視線のことは気になったが、人間の三大欲求の1つ睡眠欲には勝てなかった。 今日はまたもや珍しく、篠山が学校を休んだ。 次の日の昼休み、 「田中君、用があるから屋上まで来て…」 「???わ、分かった。すぐ行く」 その時の篠山は、妙に怖かった。 「用ってなんだ?」 「ねぇ…田中君---
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加