壱・悪夢の始まり

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「おい、吉田!テメェまた教科書忘れたのか?ちょっと前に来い!」 教科書を忘れた事を自己申告したのに対して厳しい表情を見せる佐藤先生は彼を前に呼び寄せた。 吉田は怯えながら前へ進む。 やがて佐藤の前に立つと彼はその瞬間から腹に一発蹴りを食らった。 「扉や窓を閉めろ。」 皆は固まって動けない様子だ。 「閉めろって言ってんだろ!!!」 佐藤が大声を出すと廊下側際の生徒は慌てて窓や扉を閉める。 また始まるのか。 その先生の説教は他人が見ていてもとてもじゃないが面白いとは思えなかった。 殴り、殴り、殴り、蹴る。 彼の体に血が飛び散ってもそれは止みはしない。 担任は容赦なく殴り続ける。 生徒の中には白目を剥いて気絶しかけている吉田の姿を見て泣き出す生徒もいた。 やがてもう限界だと佐藤が判断するとその物体を容赦なく放り出し、教室を出て行く。 クラスの何人かは慌てて気絶した吉田に駆け寄る。 そして俺もそのうちの一人だった。 「吉田くん!大丈夫ですか!」 学級委員の高田が懸命に吉田の頬を叩く。 しばらくしたら吉田がうっすらとだが目を開けたので一同はとりあえずほっとする。 「吉田、お前どうしていっつも教科書忘れるんだよ。別に好きであいつに殴られているわけじゃねぇんだろ?」
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