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芳行は天卍神社に来ていた。天卍神社は歴史も古く、それなりに立派な神社だ。最近になって大改修を行ったらしく、今は清潔のある綺麗な神社として知られている。
「世界が平和になりますように」
芳行はポケットから小銭を投げ入れ、手を叩き一礼した。
神に祈るなんてオレらしくないな。それほどにまで焦っているのか。
ふと、視線を近くの竹林の方に移すと、巫女に身を包んだ少女が厳かに竹林に肩まで伸ばした黒髪を揺らしながら入って行った。
「あれは確か、加俸院明葉」
加俸院明葉は芳行と同級生だ。いつもは教室の隅で本ばかり読んでいて、あまり目立つような人柄ではなく、なにを考えているかよくわからない少女だ。
明葉は一体どうしてあんな格好で人目を避けるように竹林に姿を消したんだ?怪しい。怪しすぎる。もしや、彼女も邪王の戦いに導かれし者なのか。芳行は明葉の後をつけた。
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