日常の崩壊

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さっきまで作文を読んでいた少女がお辞儀をしてステージを下りた。そして、今日のメインイベント、WBC(ワールド・バカ・カップ)王者、佐藤翔子が体育館のステージへ上がり作文を読み始めた。  「私はお兄さんが大好きです。私が困っていると、お兄さんはいつも助けてくれます。この前、私が算数の宿題に困っていると、お兄さんは宿題を手伝ってくれました。私はお兄さんみたいに優しい人になりたいです」  翔子は一礼して自分の席に戻った。 キャハッハッハ、腹痛ぇ。止めてくれ。新太郎は身体を左右に捩りもだえながら、苦しんだ。  そんなこんなで放課後。翔子は学校が終わると、家に向かって一目散に駆けだした。兄の芳行は一足早く夏休みに入っている。 お兄ちゃんはきっと私の帰りを待っている。今日は兄さんとゲームするんだ。今まで一回も勝ったことがないけど、今日なら勝てるかもしれない。 翔子はこれからの夏休みのことを思い浮かべながら、家に急いだ。
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