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いや、ちょっと待てよ
同じ会社の社員なんだから、別にどこに居たって不思議ではないぞ
それに弱冠20歳の女子社員の前で、つまらない事でうろたえる姿を見せるわけにはいかない
…ナニヨリ カッコワルイジャン?
私は平静を装う事にした
「いや~何でもないよ
ところで平成建設の資料は
どの棚かな?」
言いながら私は、資料室の棚が並ぶ方へ歩き出した
「あ!いいです!
アタシが探しますー!」
…アンタに任せれっかよ
先週だって棚を引っ掻き回して
後始末に残業になって
せっかくセットした合コンも
行けなくなったしさぁww
ガタンと席を立った彼女は、私がいる棚の列の次の筋へ姿を消した
「あ、そっちか、すまないね」
「い~ですよぉ
だって仕事ですしィ」
この棚は向こう側と通々になっていて、甘井香の動きが、ポッポッある隙間から見えるのだ
いやそれよりも…この香り……
その為に毎朝、特に用事もないのに資料室へ来るのだ
そんな楽しみでもなければ、誰がこんな会社に…
「ありました~♪
図面も要るんですよね~?」
「来るもんか!」
「えー?何です~?」
しまった!
頭で考えていた続きを、思わず口に出してしまった
「あー、全部持っていくよ」
「はーい」
「ところで係長?」
「何だね?」
「何だか今日…
寒くないですかぁ?」
…寒い?
確かにもうすぐ11月だが
この部屋の中は…?
「そうかい?
風邪引き始めじゃないかな?」
「あ!そうかも?
何だかゾクゾク……」
私はふと、小林美樹の方を見た
彼女はやはり、うつむいたままで座っていた
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