呪い:消滅

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そう、我孫子 佑は死にたがりだったのだ。 死にたがりと言っても、やはり、普通ではない。逸脱している。 普通であれば 「もう、人生に疲れた」 「生きる意味が無い」 「何もする気がない」 「生まれた意味が無い」 と言った、虚無感、空白感から生まれる、自殺の欲求。 だが、そこには少なからず、恐怖がある。 死にたい。だけど、死ぬのは怖い。 そんな理由で、迷っている人間は、世界にいくらでもいるだろう。 自殺をしてしまう人でも、人生を終わらせる。というこれ以上無い覚悟を決めた上で、決行する。 のだが・・・・・・。 我孫子 佑には、恐怖が無い。 いつでも死ねる。 迷うレベルが違う。 まるで、買い物だ。 どうしよう、買おうかな、いや、今度にしようかな? みたいな感覚は、誰にでもあるだろう。 我孫子 佑の「死」に対する迷い。というのは、その程度であった。 そして、遂に。 「死ぬか・・・・・」 洗濯物を取り込み中、ベランダから、飛び降りた。 コンクリートの塊、道路へ、頭から。
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