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あの頃のオレは、まるで鎖から解き放たれた獣のようだった。
15で家を出た。オレの出生の秘密を知って、すべての大人がクソみてーに思えたからだ。信じられるものなどなかった。
たまたま喧嘩は強かった。街のチンピラどもとウサ晴らしにやり合ってるうちにいつの間にか猿山の大将に納まって、チンピラグループ「キラー」の頭を張った。
「キラー」は高校中退者、果ては中坊までが集まる若手の不良グループだ。万引き、カツアゲ、ヤクの売買にレイプ、強盗傷害何でもござれの外道集団。おまけにトップになった奴はもれなくやくざに就職出来るときたもんだ。バックにゃ大物やくざ昇竜会。OBにやくざがいりゃあそりゃ気も大きくならーな。お上もなかなか手が出せねーやりたい放題だ。
港近くの倉庫街。そこがいつもの溜まり場。
そこではいつも拉致ったオンナ犯ってるか、盗んだ金で宴会をやっていた。ゲラゲラ笑う野郎どもの声とオンナの悲鳴が毎夜響いてたな…。
「紅月(あかつき)サン。なんでいつも交じんないスか?オンナ犯るの~」
名も知らねー卑下た前歯出っ歯野郎がニヤニヤ聞いてきた。
オレはふう、と煙を吐いた。
「けっ、くだらねー…嫌がる女抱いて何が楽しいんだよ」
マルボロの空き箱を握り潰す。ちっ、タバコ切れちまった。
いらいらすんだよな、タバコが切れると。
「おい」
「へ?」
「タバコ買って来い。盗んでくんなよ、釣りはやる。マルボロメンソールカートンだ」
オレはそう言って、出っ歯に万札をほおった。
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