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口笛を吹きながら、腐った夜を眺める。
街のネオンで濁った夜空は、オレ達に似ている。明かりがなきゃ、怖くて夜も過ごせないんだ。
オンナの悲鳴が嬌声に換わった。あーあ。…堕ちちまったな。
可哀相に、もう戻れねーよ。あのオンナも、威されて風俗に身を堕とすんだろうな…
この世は喰うか喰われるか、弱肉強食の世界だ。
強い者だけが生き残る。
弱い者の悲鳴は届かない…
オレは貨物用のコンテナから飛び降りた。
つまんねーよ、てめぇら。
「オレは、今日はもうふけるぜ。てめぇら勝手にやってろ」
Gパンのポケットからバイクのキーを取り出そうとした時だった。
倉庫に駆け込んで来た出っ歯野郎が倒れ込んでこけた。…あ、タバコ買いに行かせてたっけか…
慌ててたらしく、あちこち擦り傷まみれだ。
「た、大変す紅月さん!「ハウンド」の奴ら、今日ここに戦争しに来るっす!!」
!!なんだと!
「おいてめぇ、そら本当か?!」
オレは出っ歯野郎の襟首掴んで締め上げた。
出っ歯は喚いた。
「本当ですって!!二丁目のコンビニにタバコ買いに行ったら、奴らのバイクがたむろってて…下っ端が今日の夜、「キラー」潰すって…っ」
バイクの黒い「ケルベロス」のステッカーと左腕の入れ墨は、間違いなく奴らっす…!!
ケルベロス…確か頭が三つある地獄の番犬。「ハウンド」のシンボルマークだったな。
「頭!どうすんすか?!」
「確か「ハウンド」っていやあ、昇竜会に喧嘩売ってる虎峰組が後ろについてる族っすよね」
わらわらと野郎どもが集まって来た。
「いいんじゃねぇの」
オレは新しいタバコの封を切り、一本取り出して火を付けた。
ゆっくりと煙を吐き出す。
「竜は虎と喧嘩して、オレ達ゃ犬と喧嘩か。洒落てんじゃねーか」
くくく…。「ハウンド」ごときに戦争仕掛けられるたあ、随分「キラー」も嘗められたもんだ。
頭のオレを怒らせたこと…。後悔させてやるぜ。
「おいてめぇら、オレの単車持って来い…久々の兇宴の始まりだ…!!」
「イェーイ!!待ってましたぜ!!」
「祭だぜヒュー!!」
わあああ!!野郎どもが一気に色めき立つ。どいつもこいつも相手をぶちのめすことしか考えてない。…楽しくなりそうだ。
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