プロローグ

3/8
前へ
/14ページ
次へ
口笛を吹きながら、腐った夜を眺める。 街のネオンで濁った夜空は、オレ達に似ている。明かりがなきゃ、怖くて夜も過ごせないんだ。 オンナの悲鳴が嬌声に換わった。あーあ。…堕ちちまったな。 可哀相に、もう戻れねーよ。あのオンナも、威されて風俗に身を堕とすんだろうな… この世は喰うか喰われるか、弱肉強食の世界だ。 強い者だけが生き残る。 弱い者の悲鳴は届かない… オレは貨物用のコンテナから飛び降りた。 つまんねーよ、てめぇら。 「オレは、今日はもうふけるぜ。てめぇら勝手にやってろ」 Gパンのポケットからバイクのキーを取り出そうとした時だった。 倉庫に駆け込んで来た出っ歯野郎が倒れ込んでこけた。…あ、タバコ買いに行かせてたっけか… 慌ててたらしく、あちこち擦り傷まみれだ。 「た、大変す紅月さん!「ハウンド」の奴ら、今日ここに戦争しに来るっす!!」 !!なんだと! 「おいてめぇ、そら本当か?!」 オレは出っ歯野郎の襟首掴んで締め上げた。 出っ歯は喚いた。 「本当ですって!!二丁目のコンビニにタバコ買いに行ったら、奴らのバイクがたむろってて…下っ端が今日の夜、「キラー」潰すって…っ」 バイクの黒い「ケルベロス」のステッカーと左腕の入れ墨は、間違いなく奴らっす…!! ケルベロス…確か頭が三つある地獄の番犬。「ハウンド」のシンボルマークだったな。 「頭!どうすんすか?!」 「確か「ハウンド」っていやあ、昇竜会に喧嘩売ってる虎峰組が後ろについてる族っすよね」 わらわらと野郎どもが集まって来た。 「いいんじゃねぇの」 オレは新しいタバコの封を切り、一本取り出して火を付けた。 ゆっくりと煙を吐き出す。 「竜は虎と喧嘩して、オレ達ゃ犬と喧嘩か。洒落てんじゃねーか」 くくく…。「ハウンド」ごときに戦争仕掛けられるたあ、随分「キラー」も嘗められたもんだ。 頭のオレを怒らせたこと…。後悔させてやるぜ。 「おいてめぇら、オレの単車持って来い…久々の兇宴の始まりだ…!!」 「イェーイ!!待ってましたぜ!!」 「祭だぜヒュー!!」 わあああ!!野郎どもが一気に色めき立つ。どいつもこいつも相手をぶちのめすことしか考えてない。…楽しくなりそうだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加