プロローグ

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暴力は人を傷つける。殴られた奴より殴った奴の方が痛いとか、良心が痛まないだとか?…非暴力を唱える奴らの高尚な台詞は聞き飽きた。 殴ったら拳は腫れるに決まってる。 殴られたり斬られたり撃たれたら血だってそりゃあ出るだろ、もしかしたら死ぬかもな。 でも、だから? 「おらぁ、ヌルイんだよ、もっとこいよ!!殺したいんだろ、そんなじゃオレは死なねー!!」 またオレの廻し蹴りが一人にヒットした。案外腹ってやわらけーからな。内臓ヤラたら胃の中ぶちまけるよなァ? 蹴られた奴がもんどりうってよろける。刹那、後ろからバタフライナイフで頬を斬られた。 久しぶりに自分の血の色を見た。 どくん。 やばい、楽しすぎて狂っちまう! オレってやっぱオカシイな、自分の血の色に興奮してる。だって、オレはこの瞬間は生きてる。 流れてる血が暖かいとか、この生々しい匂いとか。 嘗めると甘い。きっとそのうち血見たさに殺人を犯すぞ、アハハ… 殴る、殴る、蹴る、蹴る、たたき付けて潰す。 虫けらのようにのたうちまわる下っ端ども。 「あはははははは」 オレは笑っていた。手は血まみれ。頬からは紅い液体が滴る。 いつの間にか誰も立ってない。「キラー」の奴らはドン引き。 一人で血の海の上に返り血まみれで笑ってるオレ。 そら引くわ~。 「…スッキリした。」 はあ、と息を吐いて。タバコをくわえた。 麻痺した脳みそに煙を送り込んで。 「紅月サン、こ、殺してないすよね?!」 出っ歯が完全にビビって恐る恐る聞いてきた。 「さあ?」 死んだら運が無かったってことだろ。 手加減は出来ないし、手を抜いたら死ぬし? 「こいつらオレを殺したくて来たんだろ?じゃあオレだって本気で防衛しなくちゃなあ…」 ククク…。タバコを吸いながら、にやりと笑った。 *********** 紅い月。昔から不吉なことの予兆として伝えられてきたそれは、結構当たってる。紅い月が輝く深夜、生まれたオレは。 暴力に生きる意味を感じる腐った人間に育った。 災厄を招き、災いを引き寄せ。痛みに怯える顔を見ることに、快楽を感じる。 ああ…。
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