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塒は毎日変わる。駅のホームや廃ビルや誰もいない倉庫の中とか。雨露凌げればいい。
そんなストリートチルドレンは、未だ少なくない。家出少女は街角で客をとり。不良少年は徒党を組んでおやじを狩る。
最近の塒は、街外れの廃ビル。窓ガラスもないし、寒いが屋根がありゃ充分だ。
「帰ったぜ、いい子にしてたか?」
途端、にぁ~とマヌケな鳴き声が出迎えた。
ずんぐりとした白黒ブチの不細工猫。
「アビ。今日はシラス入り猫缶だ、有り難く喰えよ」
そう言ってコンビニ袋から缶詰を出し、口を開けて皿に持ってやった。
アビはにあ~と鳴くと、がつがつ食べはじめた。
オレはコンビニ袋からパンと牛乳を出し、パンをかじる。
まずい。最近何食ってもうまく感じない。
こいつがうらやましい、なんでこんなに旨そうに喰うんだろう。
アビははぐはぐと音を立てながら、夢中で食べている。
ま、生きる為には喰わなきゃいけないよな。
…アビは捨て猫だ。最初に逢った時、首には首輪がついていた。薄汚れた、蒼い首輪。食い込んで苦しんでいたのを、見つけて。
何となく助けたら懐かれた。
奴は人を嫌ったりしない。裏切られても、アビは人間を避けようとはしなかった。でもけして媚びてる訳じゃない。アビは独りでネズミや鳥を捕ることもできる。
ただ、きっとオレと同じなのだと思う。
捨てられた者同士、疵を嘗め合っているのだ。
居場所がない。食うや喰わずの時だってある。
冬は凍えて死にそうになった。薄い毛布に包まりながら、全てを憎み、恨み、暴力でしか生きていけない虚しさを噛み締め!
にぁ~
気が付けば、アビが服の袖を引っ張っていた。どうやら喰い終わったらしい。
「はやっ!もう喰い終わったのか?」
抱き上げて、膝に乗せてやる。顎を撫でてやると、ゴロゴロと喉を鳴らした。
不細工でデブだけど、やっぱりかわいいと思う。
つかず離れず、ただ隣にいるだけで、癒されると。
いつか、アビは別の場所に行くかも知れない。だけど、今、この時はまだ。ここに、居た。
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