~田中 明~

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  今日は何を隠そう母の日だ。 世間のママさんにとっては喜ばしい日。 まぁ、陽介には悪い事をしたから何も期待はしていないけども。 ・・・なんて自虐気味に言ってみる。 「ママ!ボクばんごはんつくる!!」 「え?」 天使の様な可愛い笑みを浮かべて駆け寄って来るのは我が息子、陽介[ヨウスケ]。 「ご飯・・・作ってくれるの?」 小さい頭をこれでもかというくらい大きく首を縦に振る。 「そっか! じゃあお願いしよっかな♪」 ニコニコと私を見上げる彼に私もニッと笑顔を返す。 「お買い物行こっか?」 そっと手を差し延べるとその手を掴まず、首を横にふった。 「?」 「おかいものもボクひとりでいく♪ いってきまぁす!」 「え?・・・あ。」 ガチャン。 小さな背中は既に扉の向こうにあった。 《一人で行くって・・・心配だなぁ。 よし、ちょっと追い掛けよう。》 そう思い立ち、陽介の後をコッソリと追い掛けることにした。 この時の明にはまだこの天使のような囁きが恐怖の始まりとは、気付いていなかった。  
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