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「じゃ、またねー。」
「うん、また明日。」
友人と別れの挨拶をすると何時ものように家路につく。
「遅くなっちゃったなぁ・・・。」
そう呟くと、ビルがそびえ立つ空を仰ぐ。私が東京に上京してきてはや半年。友達も出来て学校生活もうまくいっている。だが1つ、悩みの種がある。それは
「ひゃあ!!」
靴紐が切れて盛大に転んでしまった。おまけにゴミ置き場の中に、だ。
「く、臭い・・・」
“運”が無いこと。どうやら私は他の人よりも“運”が悪いらしい。靴紐が切れて転ぶ、なんて事は日常茶飯事である。
ちなみに今日は、男子生徒がつまずいて、“偶然”私が目の前におり、男子生徒は私のスカートを掴みながらそのまま・・・
「いや、思い出すのは止めよう。うん。」
私は一人頷くと埃を払い立ち上がる。しかし・・・臭い。
「ハァ、今日はお風呂が長くなりそうだなぁ。」
また独り言を呟き、歩こうとするとなにか音が聞こえてきた。
ズルズル、ピチャピチャ・・・何か液体をすすっているような音。その音は、ちょうど、私が転んだゴミ置き場の曲がり角から聞こえてくる。
「・・・・。」
私の悪い所はもう1つある。それは“好奇心”だ。小さい頃からいろいろな事に興味があり、よく首を突っ込んではろくな目にあっていない。
この時もよせばいいのに、音の正体が気になり、見ようとする。
私は再びゴミ置き場に埋もれながら覗いてみると、そこには人がうずくまって何かやっているのが見えた。
「(何やってるんだろ。んー、暗くてよくわかんないな。)」
そう思いながらちらりと空を見ると、ちょうど月が雲から顔を出すところだった。
「(お、ナイスタイミング。これでわか・・・)」
私は、やはり見なければ良かったと後悔した。
「う・・・そ・・・」
月明かりに照らされたのは、赤い眼を爛々と光らせ、口からは真っ赤な液体を垂らした男。
そして足下にはピクリとも動かない女性が一人、横たわっていた。
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