プロローグ~愚者の諦念~

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疲れました。 人として産まれて、まだ十と一年しか生きていないのにも関わらず、人生に疲れてしまったのです。 父の存在が気になり安眠すらできずに朝を迎え、学校に行けば虐められて、家に戻れば、また父に怯えてゆとりなく過ごす。 自分で言うのも難儀な話なのですが、そんな労しい暮らし向きに、酷くきょうだして生きてきたので、やつれてしまったのです。 現実を直視しないように目を伏せて、僕が壊れないように身を丸めて。 そうやって醜く哀れに生き延びてきました。 恥ずかしながら、自尊心のない薄弱さゆえに、僕は崩れずにいられたのです。 そして、ついに父が死にました。 耐えて、耐えて、ようやく打ち勝ったのです。
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