はじまる

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彼が選んでくれたお店は、高い有名なパスタ屋さんでもなく、 ファミレス的なフランクすぎる場所でもなく、 騒がしい場所から少し離れた小さい可愛いお店だった。 「ゆっくり話せる場所の方が好きだから。」 と、待たせていた時間に探してくれていたとの事。 そのセンスもとっても素敵。 さらには私との時間のために、空いた時間を使ってくれた事が何より嬉しかった。 食事は食後のコーヒーにさしかかっていた。 「次は僕がお返しにご馳走するよ。」 「‥え?」 聞き間違いかと思った。 「今度はいつ会えるかな。」 答えられない私に彼は続ける。 「ごめんね、もし良かったら‥で。 ただ、なんか僕に会うのにオシャレしてくれたり、嬉しくて。 可愛いなぁって思って。 もっと二人で沢山会いたくて。」 彼が話し終わっても、私は言うべき言葉が見付けられなくて。 「急にごめんね。でもほんとは知り合う前から可愛いなって思ってて。 定期の持ち主が結花ちゃんだって分かって嬉しかったんだよ。」 一つ一つ、私の反応を確認しながら‥ 「だから‥もし嫌じゃ無かったら、また会いたいなと思って。」 意外だった。 彼も出会う前から私を見ていてくれていたこと。 でも、こんな上手くいくハズなんて‥ やっぱり彼は軽い人なのかな。 いざ矢印が自分に向いて、美味しい話ばっかり降りかかってくると、躊躇してしまう。 「ごめんね。僕ばっかり気持ち押し付けて気分悪くしたよね。 今日一緒にご飯できた事だけでも嬉しいよ。どうもありがとう。」 だめ、終わっちゃう‥。 「あの‥ほんとは‥ 実は‥ 私もずっと気になってて‥」 彼は待ってる。 私の言葉を‥。 でも言葉がでてこない。 なんて言えば言いか分からなくて、彼に助けを求めたくて顔をあげた。 彼はしばらく私を見て、手で顔を覆った。 ‥逃げ道がなくなった。笑 また視線を冷めたコーヒーに戻すと、彼の手がやって来た。 顔をあげると彼は憂いとも喜びともとれる優しい顔で微笑んでいた。
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