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訝しげに思ったが、それでも武蔵国から出たことのない郷には抗いがたい魅力を持つ言葉だった。
二つ返事で、兄の馬に揺られ、鎌倉に向かう。
それは日射しが目に見えて強くなり始めた四月の事。
今年はさくらが咲くのが遅い。
ようやく蕾を膨らませ、柔らかな香りを漂わせようとしていた。
「郷、あれが我らが殿の氏神を奉っている、鶴ヶ丘八幡宮だよ」
日射しに目を細め、遠く彼方に見える八幡を指差した。
郷は兄が指差すもの全てをそのつぶらな瞳で追い、刻み付けた。
どれもが珍しい。
瑠璃のようにきらきらと輝いて見える。
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