12733人が本棚に入れています
本棚に追加
「……この方達は何方でしょうか?」
今朝出掛けていく時と同じように砂塵を巻き上げて帰ってきたアルは、近くにいた今朝にはいなかった隊員達の注目を集めており、またアルも宿屋へ足を進めながら、自分を驚愕の表情で自分を見つめる数名の男達を首を傾げながら見つめる。
「……あ! 思い出しました! あの鎧は確か……」
「おーい! アルー!」
アルが記憶を巡らせて何処かで見覚えがあった鎧や兜が王立騎士団のものであることを思い出したその時、彼は小走りで此方に向かってくるミスティアに呼ばれそちらに顔を向けると、そこにはミスティアと見知らぬ男の姿があった。
「お帰りアル。そろそろ帰ってくる頃だと話してたところなんだ」
「そうでしたか。……ところで、後ろの方もそうですが、どうして王立騎士団の方達がいらっしゃるんですか?」
「あー、それは……」
「いやー、どうもっす旅商人!! 俺はマルクっていう名前っす! その疑問の答えは、俺達はあんた達と同じ理由でここにいるっすよ」
ミスティアの言葉を遮りながら笑顔で挨拶をしたマルクにアルは少し驚きながらもこちらこそよろしくお願いしますと会釈をする。
そして、どちらからとなく二人は右手を差し出して握手を交す。
「……へえ」
――強い。
握手を交わしたその時、二人はそう力量を感じとる。アルは、笑顔であった顔を真剣な表情に変え、マルクは、思わず感嘆な声を漏らした。
そんな二人を怪訝そうな顔で見つめるミスティアを横目に、二人は手を離すと、アルは、顔を笑顔に戻して口を開く。
「……マルクさんお強いですね。……もしかして、マルクさんは隊長ですか?」
「違うっすよ。隊長は、向こうにいる――」
「隊長は私よ」
それは一瞬であった。
マルクが、体を捻りエルフィを指差そうとしたその瞬間、エルフィの声が三人の耳に届く。
そしてその直後、凄まじい勢いで風を斬るようにエルフィが現れ、アルに向かって真っ直ぐな太刀筋で横一閃に斬りかかった。
最初のコメントを投稿しよう!