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「まっ……待ってください! あなたは一体何者何ですか!?」
彼女は一度そこで区切ると、アルの目を真っ直ぐに見て、近づきながら怒鳴るように言い放つ。
「レッドタイガーを簡単に倒したと思ったら、ギルドの人なのに、まるで商人みたいに牙や爪などをどこに売るのか決めて、そのまま持って帰ろうとして! それを一体どうする気ですか!? あッ!! そういえばまだ、ギルドランクも教えていただいてませんよね! 早く答えて下さい!」
「あっ……あの、……あなたの質問に対する答え何ですが……」
彼女の勢いに少し怯んだアルだったが、彼女の問いに答えるため、一度大きく息を吐き出し、ゆっくりと喋りだす。
「まず最初に、これをどうするかについてですが……」
アルは、レッドタイガーに目をやりながら答えた。
「先程私が言ってたように、こいつは鍛冶屋や装飾品店に売りに行きます。私の生活がかかってくるので……」
シャルナはその答えに少し不思議に思い、再びさっきよりは落ち着いた口調で口を開いた。
「何故生活がかかるのですか? そいつを倒したとギルドに言って、記憶を見せ証明さえすれば、特別報酬でかなりの額が貰えるはずですよ?」
そう言うと、アルは苦笑いをした。シャルナは何故笑っているのか、理解出来なかったが、再びアルに話し掛けた。
「さらにアルさんは、まだランクを聞いてませんが、こいつを簡単に倒したということは、少なくともAランク以上ですよね? 確か……、Aランクは一回の依頼で、十万ゼルは貰えるはずです。なので、生活に困るなんて事は無――」
「それなんですけどね……、実は……」
シャルナの話を止め入ったアルは、そこまで言うと、頬をかき、苦笑いしながら、こう言った。
「実は私……、ギルドの者ではないんです。私は……
……ただの商人なんです」
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