12732人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
「…………っふぇ!?」
「なんて可愛い声出してるんですか……。……だから、私はただの商人です。ギルドの隊員ではないですよ」
可愛いと言われた事に、顔を赤くしたシャルナだったが、そんなこと気にせずにアルに向かって言葉をぶつけた。
「うっ嘘は言わないでください!! あんなに強いのにギルドにいないなんてッ! しかも、“王立騎士団”でもないんですかッ!? その強さで!? ……しかもさっき可愛いって、……えーッ!!」
「……静かにしてください……。もう夜も遅いんですから………。しかもシャルナさん、王立騎士団なんて、幼少期から“王立騎士団専門学校”に入学して、二十歳まで通うのですよ。しかも完全寮生活なのに、矛盾だらけでおかしいじゃないですか…」
それを聞いてあっそうでしたとシャルナは納得したが、どうも納得がいかず、未だに赤い顔のまま、腕を組み唸り始める。
アルはそれを見て大きな溜め息を吐くと、もう行きますねと言い、出口へとゆっくり歩き始める。
それに気づかないシャルナだったが、彼女はとある噂を思い出した。それは、同級生の友達が話してくれた、嘘のような話だった。
「……ねぇ~、知ってるシャルナ~?」
「何ですかミリナ……?」
「この国のどこかにね~? このギルド“天使の羽”で一番強い人と、おんなじ位強い人がいるんだって~。しかもね、なんとその人は商人さんらしいのよ~!!」
「……ミリナ、そんな人がいる訳ないじゃないですか……。そんな強い人がいたら、ギルドに入ってるに決まってるじゃないですか……」
「本当なのよ~! その人は自分で~、Aランク以上の魔物を倒して、その魔物の素材を売ってるのよ~!! 凄いでしょ~?」
「はいはい、凄いですね~。じゃあ依頼をやりに行きますよー」
「ちょっと~! シャルナ信じてよ~! 本当なんだから~! 待ってよ~………」
「……もしかしてあの話の商人て、アルさんッ!? ……ってあれ? ……アルさーん!! どこですかー!?」
シャルナが顔を上げた時、既にそこにアルはおらず、シャルナ一人しかいなくて、目の前には無残にも木々が倒れている森が広がっていた。
一方その頃、すでにアルは横三m・縦十mの荷車に、薬草や毒消し草、それに魚十匹を隅に積み、真ん中にメインとなる“商品”を積み、嬉しそうに笑いながら、街へと荷車を引いて帰っていた。
最初のコメントを投稿しよう!