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「十時ッ!? ……しまった。……寝坊しました」
ベッドと机以外に家具が見当たらない部屋で、焦った声で青年は呟く。そしてその直後、青年はベッドから飛び降り、パジャマを上下同時に脱ぐと、昨夜就寝前に用意した服に一瞬に見える目にも止まらぬ早さで着替え、寝癖を水につけ――というよりは頭に水を被り、家を飛び出した。
この間にかかった時間は十五秒。彼のこれまでの人生で最速だったという。
彼は古ぼけた家の横に置いてあった荷車を持つと、積んである商品が落ちないギリギリの速さで走りだした。そして、走りながら昨日のことを思い返す。
「昨日は、家に着いたのが十二時。……それから、あれをばらす作業をやって、終わったのは……確か二時。……てことは、八時間も寝てたのですか。……酷い失態ですね……!!」
そう言うと、彼は無言で目的地である街に向かって走り出した。
ここは、クラストから北に十キロほどの所にある街、“エリトマ”。小さいながらに商業が盛んであり、昼夜共に人で賑わう街である。
その街の入り口で、一組の男女が立っていた。
「……遅いなあ、あいつ……。いつもより二時間も遅いぞ。寝坊でもしたのか?」
「珍しいわね、あの子が、遅れるなんて……」
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