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「厳しくないですよ。全て事実ですから。……全く王立騎士団の総長を除いた男達は、どいつもこいつも弱い奴ばかりで……」
「あっあの、エルフィさん? 顔が恐いですよ?」
突如、語尾が小さくなったかと思うと険しい表情になったエルフィに、ミスティアは、苦笑を浮かべながら宥めようとする。しかし、その声が聞こえていないのか、彼女はミスティアを置いて、独り言のように言葉を発しながら足を進める。
「大体、国を守る職でありながら、あの程度の力で良いわけないのよ。商人や農民でもないのに、同じ職の女に負けるなんて……悔しいと思わないの? ……やっぱり、他の隊長達ももっと隊員の修行を厳しく……」
「あの……? エルフィさ……」
「無駄っすよ。あーなっちゃった隊長は、暫くは何を言ってもこっちに戻らないっす」
突然背後から聞こえた声にミスティアは驚き、勢いよく振り返ると、そこには、どうもっすと笑顔を見せているマルクがいた。
「あの、それはどういう意味ですか?」
「うーん。まあ俺からは詳しく言えないっすけど、隊長は、ちょっと男の強さに関して厳しいところがあるっすよ。だから、強い弱いや戦いの話をすると、たまにあんな風になっちゃうんっすよ。他の隊長さん方まで批判しちゃって、自分と殆ど強さは変わんないっすのに……」
マルクは、後頭部を掻きながら説明をすると、最後に苦笑を浮かべる。ミスティアは、それにそうなんですかっと頷くと、一人ですたすたと未だに呟きながら歩いて行ってしまっている隊長を一つ汗を垂らして見つめた。
「そういえばミスティアさん。噂の旅商人は何処にいるっすか? ……実は俺、一回会ってみたかったんっすよ」
「アルですか? えっと……アルは今、デスクライトに探索と薬草採集に行ってます。多分、もう少ししたら戻ってくると思います……あっ帰ってきました」
子供のようにわくわくと嬉しそうな顔で訪ねるマルクに、ミスティアは首を街の入口へ向けながら答えていると、そこに質問内容である人物である――荷車を引いたアルを見つける。
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