プロローグ

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彼は付近の街で“やつ”が現れると聞いた場所の周辺を暫く、もうかれこれ二時間は歩いたのだが、どこにも気配を感じることがない。 「もしかしてガセネタでしたか? そうだとしたら、少々困りましたね……」 彼は思わずそう呟く。 そして、一度目を閉じ、ゆっくりと空を見上げ月を見つめると、“やつ”を仕留めれなかった今、この後どうしようか、明日は一体どうしようかと、顎に手を当て真剣な表情で考え始める。 「とりあえず、薬草と毒消し草をもう少し採っておきましょう。後は魚と、出来れば小動物をそれぞれもう十匹ほど捕ま……」 「きゃあああああああッ!!」 「ッ! あちらですか……」 彼は、突然響いた女性の悲鳴に一瞬目を見開いて驚くが、すぐに冷静を取り戻し声の聞こえた方へ目線を送る。 そして、その声の確認したと思うとまるで最初から居なかったように、彼は草を踏む音を残して一瞬で消えてしまっていた。
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