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──アテリアと。そう呼ばれる名の由来は、英雄が関わっていると伝承されているが──真偽はさておき。
魔法がはびこるその世界を纏める、王政の頂点が住む島国。
この場所にも、例の魔物による騒動は波紋を立てていた。
〝大樹ユグドラシル〟に寄り添う形で建てられた城。
権威と威厳を顕すその城の最奥。その場所に、冠を頂く王は座っていた。
白髪老人の男性で、顎から伸びる髭は胸部を越えている。
「……被害は」
脳に直接響いてきそうな声で王が言う。
恭しく頭を垂れていた者が、視線を王へと向けて口を開いた。
「現在、交流都市、庭園国、和都等、主要都市近辺で被害が出ております。死者は百人を越え、いずれもAランク以上の魔物の仕業だとのこと」
王は目を閉じたまま聞き、髭に囲まれた口から言葉を洩らす。
「鎮圧に〝王立魔導軍〟を動かして構わん……ワシの名を使え」
「仰せのままに」
「……動き出したか」
王が見つめる先で、高くそびえる大樹が風に揺らめいていた──
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