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* * *
「……」
寮の一室、コポコポとフラスコ内で泡をたてる液体を見ながら、思考に耽る一人の学生。
空に似た色の青い髪を持つ彼は、長い足を組み合わせて静かに座っている。
これほどまでに〝考える〟という行為が似合う者も居ないのではないか。
大人びた風貌と、洗練された仕草からは少し近寄り難いものさえ感じる。
(私の仮面……ですか)
僅かに伏せた目が映す光景。彼が葛藤を始めたのもまた、その時からだった。
──昨日 特別棟屋上──
「……何故、私が仮面をつけていると?」
騒がしい二人が去った後の屋上には、青髪と赤アロハの二人が残った。
フェイの言葉にトビは目を伏せ、大きくため息。そして荒く頭を掻きながら答えを返す。
「お前から気付かせといてよく言うぜ。あんだけ上級魔法使ってりゃ嫌でも気付くってーの」
「そうですか……。いえ、そうですね」
「……」
顔は微笑んでいるが、目は濁っている。トビには今のフェイがそう映っていた。
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