─黙示録─

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        * * * 「アイツ……なんで……!?」 「そりゃ決まってる。友達だからだ」  属性が付与され、放電を繰り返す紅駆鳴を、奇妙な着物の女へと向ける。 「あの青髪はん……よう分からんなぁ」  俺とエルを見、そして更に奥を覗いてから、ナデシコは気にした風も無くそう呟く。  気を奪われる事無く状況を見渡す。フェイが冷やしてくれた頭だ……冴えない訳が無い。 「エル、カイル連れて退いてくれ」 「……嫌よ。私だってまだ闘える。アンタ、またあんな事する気?」 「あー違う。ミズキとセレナ、今気絶しそうなくらいヤベーんだ。あいつら守ってやってくれよ」  エルは一瞬躊躇う素振りを見せる。横目でそんなコイツを見てると、少し低い声が返ってきた。 「……アンタ、勝てるの? アイツ煙よ?」 「見てたよ。理解はできねーけど、仕方ない。アイツはなんでか煙に成るんだろ」  ぶっきらぼうと言われようが、割り切った。煙に成る奴を見て文句を言っても、どうなる訳でもなさそうだしな。 「それに……見ろって。アイツの左手」 「……あ」 「ほんに、適わんわぁ……傷負うやなて」  黒い着物の袖から、指を伝って血が流れる。言うまでもなく、犯人は俺だ。 「お兄やん、案外やるやない」 「俺じゃない。フェイの知識だ」  言いながら、エルに目をやる。  翡翠の吊り目が弱く見えたけど……コイツなら、大丈夫だろ。 「頼んだ」  エルは微妙に不満そうな表情。しかし分かってくれたのか、溜息に近い何かを唇から洩らした。 「……分かったわよ。……でも! もう怪我しても治らないんだからね!」 「久々に優しいな、お前」 「死んできなさい」 「それでこそお前だ」  その言葉が合図のように、俺達は向きを違えて駆け出す。  エルは倒れているカイルの元へ。  俺は……扇子を構えるナデシコへと。
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