─黙示録─

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「もう間違えない……! 覚悟しやがれ!」 「お兄やんも気張りはるなぁ! その直向きさ、若さゆえ、かいなぁ!?」  扇子を振り切り、機械兵器から風刃が飛ぶ。  風を切りながら飛ぶそれは、不可解な動きながらも、追尾するように俺へと向かってきた。  ──良く見れば、避けれる。カマキリのみたいに見えない訳じゃない……それに俺は、雷が使えるんだ。  刀を鞘にしまい、移動に全力を注ぐ。要所に瞬雷を用いる事で、隙を与える事無く避けきった。 「厄介どすなぁその速さ……!」 「師匠はもっと速ェよ……!」  風刃のコースがセレナ達に行きそうになる分は、刀で斬り払う。  落ち着いてる。けれど優位には立てていない。相対する距離の長さは変わっていなかった。 「中々、冷静になりはったなぁ」  着物の裾を振り、血を払うナデシコ。最初程余裕を見せないのは、若干でも焦り始めたのか……本気になったのか、だ。 「そりゃ、冷静で居られるだろ。……この勝負に、俺の負けはねェんだからな」  俺は強気の言葉を使う。自惚れや虚勢ではなく、ただ自分を追い込む為に。 「……凡人なら、〝風〟で来たやろに。柄にも無く、仕留める順間違うたわ」  青髪はんから、やるべきやったわ、と。ナデシコは初めて、苦笑いを見せる。 「アンタの煙が〝汚れてなくて〟良かったよ……お陰様で、斬り裂ける」 「……皮肉なモンどすなぁ」  ナデシコの煙は白い。  煙が白いのは当たり前──そうなのだが、普段見る煙は、多少は灰色である。  にもかかわらず、ナデシコの煙は〝純白〟。灰色の煙は多種多様の粒子の集合体。  純白の煙は──水滴。水と水との、結合。  それに、雷の属性付与をした紅駆鳴を当てて結合を分解。これらが、フェイが俺にくれた〝知識〟だった。
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