─黙示録─

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「血が出るって事は、アンタの煙……アンタの体の一部だな?」 「……ふん、その通りや。ウチからは離れられんし、ウチの質量よりは増やされへん」  けどな……と。凶悪な笑みに変わったナデシコは扇子をしまう。首裏、着物の中に。 「お兄やんの友達。あの茶髪の兄やんをやったんは、〝そっち〟やないんどす!」  ナデシコはまた煙に成る。煙玉を叩き付けた様に撒き上がるのは、触れる煙ではなく〝触れない煙〟。  刀では対応出来ない程の体積を誇る、薄い煙。薄いが故に、広がった煙。 『ウチの煙は確かに綺麗どす……やけども、ウチがあんさんの中に入って体ん中ズタズタにするんとか、どないやろなあ?』 「マジかよ……!」 『あのお兄やんはなんや掌底の空圧で防ぎよったけどなぁ……』  既に口や顔まで煙に成ったナデシコ。声がどこから聞こえるかさえ分からない。 『お嬢はん守うとる隙に、扇子でズバン。あのお兄やんも、仕留めといたら良かったわぁ』 「案外、詰めが甘いなアンタ……!」 『エエ男に弱いんどす。それもまぁ……これで終まいや!』  小さな雲のような姿で、ナデシコは覆い被さるように迫ってくる。  対する俺は刀一本。出せて三連撃。雷を付与したとしても……多分、六連撃そこら。  ──たった六撃で、気体へと変わったナデシコに致命傷を与えるのはある種賭けだ。  斬った部分が急所なら勝てる。けど、斬りやすい部分に急所は持ってこない筈だ。  先程は手だった。それも、狙っての事じゃない。偶然手だっただけだ。  ──落ち着け。一撃で仕留めようとすんな。斬った瞬間離れてやれば……!  一撃離脱。消極的ながらに確実に傷を負わせられる。しかし、此方も魔力の消費というリスクを背負う。  その手段を、頭の中で採用した時だった。 「なッ……!?」  ──地下が、地震の如く揺らいだのは。
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