─黙示録─

28/31
前へ
/598ページ
次へ
 目で分かる程に景色が揺れた。一度盛大に揺れた地面は、今尚強弱を付け揺れ続ける。 『〝クィンハート〟はん……エエとこで茶々入れよってからに』  壁に亀裂が入って、天井からは黄土色の石がこつこつと振ってくる。そういえば、地下だった。  そして観客席からは、サバト装束が次々に転移して消えていく。  一瞬で、地下には俺達とナデシコだけに。 「く……! おいナデシコ! お前の仕業かよこれ!」 『……こりゃ、崩れてまうなぁ』  俺の質問には答えずに、ナデシコは煙化を解いて降り立った。  黒い着物がふわりと揺れて、すぐに凛と整う。そして不敵な笑顔を浮かべた。 「今日のところはお預けどすなぁ……命拾い、しはりました?」 「知るかよ! つーか何しやがった!?」  言ってる間にも、亀裂が広がり揺れが大きくなる。天井から降る石も数が増え、最早崩壊と言って良い程だ。 「ウチは何もしとりまへん。……やけんど、ウチらの仲間に大層キレやすい嬢がおるんや」 「そいつが……!」  まだ敵が居るという情報に、俺は鞘を握り締める。けれど、ナデシコはキセルをふかし始めた。 「気ィ抜きなはれ。ウチはもう帰りますよって……ほっ、と」  豊満な胸元に手を突っ込んだナデシコは、何やら黒いカプセルを取り出した。 「お兄やん、同じレイスのよしみや……一つエエ事教えたろ」  ──そのカプセルが地面に落とされた途端、転移の魔法陣が開く。黒い、漆黒の魔法陣。
/598ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53889人が本棚に入れています
本棚に追加