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目で分かる程に景色が揺れた。一度盛大に揺れた地面は、今尚強弱を付け揺れ続ける。
『〝クィンハート〟はん……エエとこで茶々入れよってからに』
壁に亀裂が入って、天井からは黄土色の石がこつこつと振ってくる。そういえば、地下だった。
そして観客席からは、サバト装束が次々に転移して消えていく。
一瞬で、地下には俺達とナデシコだけに。
「く……! おいナデシコ! お前の仕業かよこれ!」
『……こりゃ、崩れてまうなぁ』
俺の質問には答えずに、ナデシコは煙化を解いて降り立った。
黒い着物がふわりと揺れて、すぐに凛と整う。そして不敵な笑顔を浮かべた。
「今日のところはお預けどすなぁ……命拾い、しはりました?」
「知るかよ! つーか何しやがった!?」
言ってる間にも、亀裂が広がり揺れが大きくなる。天井から降る石も数が増え、最早崩壊と言って良い程だ。
「ウチは何もしとりまへん。……やけんど、ウチらの仲間に大層キレやすい嬢がおるんや」
「そいつが……!」
まだ敵が居るという情報に、俺は鞘を握り締める。けれど、ナデシコはキセルをふかし始めた。
「気ィ抜きなはれ。ウチはもう帰りますよって……ほっ、と」
豊満な胸元に手を突っ込んだナデシコは、何やら黒いカプセルを取り出した。
「お兄やん、同じレイスのよしみや……一つエエ事教えたろ」
──そのカプセルが地面に落とされた途端、転移の魔法陣が開く。黒い、漆黒の魔法陣。
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