─黙示録─

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        * * * 「エルっ!」 「レイン! なんなのよ一体! 煙の奴の仕業なの!?」  俺が走ってくるのを見ていたエルが、血相変えて迫ってくる。  カイルが寝かされ、ミズキとセレナも気絶してしまったようだ。 「今は時間が無い……! フェイ、お前の妹の場所分かるか?」  フェイは立っていた。背中に数え切れない程の風刃を受けたというのに、真っ直ぐ立っている。  しかし血の流れは、止まっていない。コイツ……自分でミズキを気絶させてたしな。 「……場所は分かります。しかし、鍵が無ければ意味がありません」 「鍵なら貰った。まさか貰えるとは思ってなかったけどな」  そう、言いながら、フェイに鍵を渡した、  瞬間。 「え……?」  トン……と。喋っている最中にフェイに胸を押されて、 「ありがとうございます」  足を、地面に凍り付けにされた。俺だけじゃなく、エルも。動きの自由を奪われた。 「フェイ……!?」 「アンタ……っ!この期に及んで!」    -Re:travel- 「……【転移】」  そして、無表情のままに転移の呪文が唱えられた。  目の前に光の渦が出来る。フェイの顔が光によって見え隠れする。   ──自分だけ逃げるのか、とか。俺達を利用したのか……とか。  そんな〝勘違い〟が、一気に消え去る。 「ここからは、私の仕事です」  そう言って、フェイは一歩〝離れる〟。 「オイ……どういう事だよ……!」  光る、白い魔法陣。光で見え隠れするフェイの足元には、罅割れる地面のみ。  ──転移の魔法陣が敷かれていたのは、俺達の下だった。  俺もエルも、〝フェイ以外〟を含む形で。 「フェイ! 何してんだよお前ッ!?」 「もうここは崩れます。あなた方にこれ以上の危険は与えられない」  光が一層強くなる。転移の前兆。
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