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地下に得体の知れない漆黒の魔法陣が現れた頃のこと。
王都パレス郊外の砂漠には、少し珍しい組み合わせの二人組が居た。
「……暑い」
「文句はいけませんよトビ君。これも任務ですから」
「そりゃ分かってるが……。なぁユーラ、暑かったら脱いでも良いんだぞ?」
「なっ……!? トビ君ーーっ!」
「冗談だ……。にしても、暑い」
王都パレスの周り。大樹ユグドラシルの恩恵を受けるアテリアで、大樹周りは反動というのか、代償というのか。
草や木の一本一面すらない大砂漠だった。
パレスの中は別に暑くはないし、草や木もある。一歩外に出れば、砂漠になるのだ。理屈を抜きに。
含有される意味を取り除けば、灯台下暗しである。島国のここは、大樹か王都か、砂漠かの三つに一つだ。
「なあ……やっぱ俺らもパレス入って良いんじゃねえか?」
「ダメですよ。私達……いえ、少なくとも私は顔が知られてますから。作戦の為、です」
トビはロイヤルナイトという事実を世間にバラしてはいない。
そのトビが何故、生徒達と地下へ同行しなかったのか。
一つには、相手には知られているかもしれないという理由。一度地下に赴いた時、顔が割れたかもしれないから。 そしてもう一つは……。
「しかし、アイツら……」
「……そうですね。〝私達の時〟と、似た状況です」
腰まである純白の髪を揺らしながら、桃色の垂れ目を伏せ気味にユーラが言う。
──ユーラ=クロイツ。
魔法学園学園長にして、希代の天才〝同率〟の魔法使いである。
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