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サクサクと砂漠を歩きながら、その紺色の髪をわしわしと掻いてトビが声を落とす。
「アイツらは……ちゃんと助けられると思うか……?」
その問いにユーラは、一度小さく溜め息をついて、
「……どう答えても、私が誰かを傷付けてしまう問いかけですね。意地悪ですよ?」
「はっ……そうだな、悪かった」
──否定すれば、自分の生徒達を。
肯定すれば、〝救えなかった自分達〟を。
──ルーイ=ピクセル。
トビ達の同期仲間の最後の一人にして、唯一トビが心の底から愛した女性。
その女性を、トビ達は救えなかった。
「……だから、ですか?」
「何がだ?」
「地下へ行かなかった事、ですよ。止められたでしょうけど、トビ君なら行くと言いそうでした」
砂漠に漏れる、男の自嘲。嘲笑。
「……教師失格とは思うがな。どうしても、アイツらに自分の手でやらせたかったんだ」
頭の後ろで手を組むトビ。アロハシャツがはためき、見事な肉体が晒される。
「……トビ君は、優しいですね」
「オイオイ……俺が学園長ならクビ切るぜ? こんな事する教師」
「切りませんよ。貴方のような人は、少ないですから。私が居る間はしっかり働いてもらいます」
「セクハラしても良い?」
「クビにします」
「分かった。バレねェようにするよ」
「しないで下さいよ!」
小さく細い手を振りながら怒るユーラの頭をぽんぽんと叩く。
「分かった分かった。ったく、よくそんなんで学園長になれたモンだ」
「子供扱いしないで下さい! 学生の頃とは違うんです!」
「ロリキャラだったのになぁ……胸とか成長し過ぎだろ。シズクが泣くぞ?」
「トビ君はクビですーっ!」
「やっちまったかー」
軽い口を叩きながら、王都に沿って砂漠を歩き続ける二人。
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