53889人が本棚に入れています
本棚に追加
サクサクと、渇いた音が鳴り続ける。その行程を、眉を潜めたトビが止めた。
「ユーラ」
-Aqua spiral-
「……はい。〝廻り滝〟」
トビ達と、王都の間。砂漠の一点に水の竜巻が発生する。螺旋する水の流れを見ながら、二人は警戒体勢に入った。
「隠れても無駄だ。出て来い」
竜巻の少し右に向かって言い放つ。隠れる場所も無い、平坦な砂漠の一ヶ所に。
その、一ヶ所から、
『あれ? 失敗かなー。うん、残念』
快活な女性の声が虚空から聞こえて、その部分が歪む。そして滲み出るように砂漠に人が現れた。
「んー。雑過ぎたかな? うん、反省」
「なんだお前は……」
現れたのは、見間違う事無くピエロだった。
膨らんだ黒いズボンに、白の派手な服。開いた胸元からは谷間が覗き、性別が女である事が分かる。
とはいえ、顔のペイントも二つだけ。目の下、向かって右に涙の、左には星の模様が入っている。
「ボクに気付いたキミ達は、はてさてギルドの人なのかな? うん、確信」
外跳ねする灰色の髪に、大人ではあるが目が大きく子供のような女性は、楽しそうにそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!