─要因と清算─

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「ユーラ! 何された!?」 「分かりっ、ません。……けど、武器はこれです」  両腕と脇腹。  三ヶ所に切り傷が浮かんだユーラの白ローブに一枚、〝武器〟が姿を残している。  しかしそれは、おおよそ死神が武器と判断するには、首を傾げざるを得ない物だった。 「トランプ……?」  背後の砂漠にも、残り二枚のトランプが刺さっている。  特に特殊な点も見当たらない普通のトランプだ。 「くす……良く避けたね。首と心臓狙ったのに……うん、驚いた」  楽しげにそう言ってから、もう一度ピエロは〝手を広げた〟。 「あの動作……っ! ユーラ! 横飛べ!」  直後、風切り音と共に四枚のトランプが砂漠に刺さる。  トビの注意は避け切るという結果を導いたものの、安堵は出来ない。 「どっからトランプなんざ……!?」  ピエロの手には、何も無い。それでもトランプは飛んでくる。鋭利な、人をも切り裂くトランプが。 「びっくりしたかな? うん、大成功」  ピエロの女はパンッと手を合わせて、ゆっくりとズラしていく。 露になったその手には、一枚のトランプが口を隠すように持たれていた。  ハートの──クイーン。 「ボクの名前はクィンハート。〝生まれる筈のなかった天才〟だよ。うん、偶然」 「手品か……」  トビとユーラは構えを取る。強敵に出会った場合に見せる、慎重な構えを。 「ボクは黙示録の奇術師。さぁ始まるよ〝魔術師〟対〝奇術師〟。勝つのはどっちかな? ……うん、楽しみだ」  ウィンクと共に、灰髪ピエロ、クィンハートはゆっくりと両手を広げた。
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