─要因と清算─

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「得体が知れねェな……ユーラ、援護頼む」 「分かりました……気を付けてくださいね」  トビが前に、ユーラが後ろに位置着く。武器を構える死神の背後で、白ローブを靡かせながら詠唱を始めた。 「ふっふふー、ボクを止められるかな? ……うん、無理むーりっ!」  広げた手を交差して、何かを投げる動作を取るクィンハート。  そしてやはり動作では終わらず、何も無い手から六枚のトランプが現れ放たれる。   -Airgravity!- 「〝薙ぎ倒せ風の槌〟!」  混合魔法。  同率──等しい属性の力を最大限引き出す、彼女の基本戦術。  風と土の混合魔法。重力が増やされた空間に、天から空気の圧力が降り下ろす。  範囲、威力共に優れた魔法だ。  トランプは容易く打ち落とされ、砂漠は凹み砂塵が霧の如く舞い上がる。 「……〝滅車輪〟」  砂塵に隠れて背後を取った死神が、冷たく光る大鎌を振るう。  鎌が触れる部分は大気を裂き、速度を落とす事無く道化師へと迫った。 「……怖い怖い。死神の鎌に当たったら流石に痛いな。うん、防ごう」 「ンだこりゃ……っ!?」  クィンハートは手を向ける。鎌に向けて、何の装備も無い手の平を。  しかしその行為は、〝金属音を響かせながら〟トビの攻撃を防いだ。  再三眉を潜めたトビは、鎌を引きながらとある仮定に行き着き、即座に尋ねる。 「……テメー、まさか能力者か?」  後退し、ユーラと並ぶ赤アロハ。その言葉に、白髪と灰髪はどちらも表情を変える。 「能力者って、まさかそんな……!」 「……ふうん、知ってたんだ。うん、意外。能力者、だけどね。それじゃあ〝ただの〟天才だよね」  そう言って──ニヤリと口を歪めた灰髪ピエロは直立したまま、  口だけを、動かした。
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