─要因と清算─

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   -Grandcross- 「……〝聖波十字〟。うん、魔法だ」  グランドクロス。土の上級〝魔法〟が、発動した。砂漠に十字が刻まれ、噴き出すように衝撃波が撃ち出される。  放たれたそれをトビとユーラは躱すが、それが与えた驚きまでは躱せない。 「どうなってやがる……!?」 「メイジなんですか!?」 「違うってばー。ボクは能力者。うん、レイスだけの素質。ボクは魔法使い。うん、メイジだけの素質」  道化師が傀儡人形の素性を語るかのように、楽しそうに笑いながら自分の正体を明かす。 「ボクはハーフ。生まれる筈の無い天才。うん、強そうでしょ」 「ハーフ……? ……有り得ねェだろうが」 「世界を行き来できるのは貴女方か私達のいずれかの筈です。貴女のような歳のハーフが、この時点で存在するのは変ですよ」  ユーラの指摘に、しかしクィンハートはちっちと指を振る。 「なんにも知らないんだね。二つの世界には〝神隠し〟って呼ばれる災厄があるんだよ。うん、解説」 「……神隠し?」 「あっちとこっちは少なからず繋がってるのさ。でないとボク達も行き来できない。うん、不可能」  道化師は逆さに立つ。意味は無く、ただのパフォーマンスとして。 「それじゃなにか? テメェはメイジとして魔魂を持つ上、レイスとして希少な能力に目覚めたってのか?」 「正解正解だいせいかーいっ。うん、お利口さんだね。誉めたげる」  ただの天才ではない天才。  生まれる筈の無かった天才。  世界を越えてもたらされた、希代の天才。  奇術師は、自分をそう名乗った。  それは自惚れなど関係無い、奇跡のような、あるいは奇跡そのものの天才。  ──天才の中の、天才だった。
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