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* * *
──ギルド本部 本部長室──
「……キミにしては、冷静だね」
「俺だって飛び出してーんだがな……昔それで、馬鹿踏んでんだ」
「そっか。慎重に──だけど確実に、助けてあげなよ?」
「……言われなくても、次は助ける」
小さな部屋に、大きな机。
それを挟んで、スフィアとトビは話していた。スフィアは椅子に腰掛け、トビは柄にも無く、直立。
青の総髪の下にある表情は、赤アロハの言葉に微笑みながら、
「シャオからさっき連絡が来たよ。キミの生徒は助かった上で──離れた、ってさ」
「はっ、知ってるよ。アイツは礼儀ってモン弁えてるからな」
「おや。……会ってたのかい?」
「つっても、昨日の晩だ。謝罪と礼と……あと頼まれたよ」
「何を、かな?」
「〝妹をよろしく〟、だとさ。本当に、自分以外に目の行く奴だよ」
「ふふ……出来た子だね」
そこでトビは、一段声を小さくする。
聞いても良い事なのかどうか、分からないといった風に。
「……なぁスフィア。お前の〝青髪〟……」
まだ続いたであろう言葉を聞き届けるより早く、曖昧な返事が割り込ませる。
「まぁ、僕を見た人なら誰でもそう思うだろうね」
そう言って、ただ笑う。
いつも通りに。
「……それを俺に、教えるつもりは?」
「無いよ。こればっかりは皆無だね。だって言ったら……僕は死んじゃうから」
言って直ぐ、スフィアは目を閉じる。
訳が分からず視線を向けるばかりの死神に返ってきたのは、短い一言。
「そういう〝制約〟なんだ」
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