─事後談─

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        * * *  ──王都パレス 王立魔導軍本部──  ギルドとはまた違う、しっかりとした造りかつ、質素な建物の中の、大広間。  普段──と表現する事は決して良い事とは限らない。  それでも、有事の際には作戦連絡等の為に使われるその場所に、実力、精神共に屈強な魔法使い達が集まっていた。  一人の男の、召集の命を以て。 「すまない」  ただ耳に入るだけで気の締まる声が紡いだ言葉は、前置きの無い謝罪。  何百の部下の前で頭を下げたのは、金のウルフカットの男性。 「辞退は認められなかった。私は引き続き、この軍の総長として動く」  魔導軍総長にして、ヴァルガンド家当主。  この場を作ったのは、世界が認め、歴史に名を刻む彼だった。 「……今回私は、私情に揺らされ勝手過ぎる行動を取った。加えて、民の信頼を損なうような発言だ……許されるとは思えない」  頭を下げたまま、それでも大勢の部下に聞こえるように。  通る声を、謝罪の言葉に変えて。 「お前達には……幾千謝罪を重ねようとも、過ぎる事は無い」  軍人達は、ただただその姿を見る。  戦慄する程に強く。眩しい程に貴く。惹かれる程に優しい男の、その姿を。 「私は……。私は……! 守るべきモノに優順をつけるような男だ!」  叫ぶ。何百の部下へと。自分の信念を。  〝自分〟という、一人の人間を。 「だがそれでも! 一人でも多く助けたい! 一秒でも長い平和を守りたい! この言葉にも、嘘は無い!」  見る。自分を見る、何百の部下を。 「決めてくれ……! 今ここで、お前達自身で! こんな私に……!」  聞く。同じ志の下に集まった戦友達に。 「私情に塗れる軍の将に……命を預けられる者は居るか」  足踏み音。  足踏み、足踏み、足踏み。  足踏み、足踏み──そして、金属音。  ──何を言っているのですか。  ──貴方以外には着いて行かない。  ──それでこそ、貴方だろう。  ──だからこそ、俺達は。  ──命を、預けてきたんです。  一度揺れ、静止に留まる人の列。  彼の言葉に言葉を返さず、武器を掲げるという返答をしたのは、  例外無く、全員だった。
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