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「ま……流石に少しは〝見る〟事に慣れたみてェじゃねェか」
そんなアヤメさんの言葉に、俺は苦笑い。
「いつの間にか背後に……みたいなのは無くなりましたけどね。でも、まだアヤメさんは魔力強化だけですし……」
「一ヶ月で俺に追いつけりゃ世話ねェよ。お前も一応瞬雷の継続時間が延びてんだ、成長はしてんじゃねェか?」
「そこ疑問形ですか」
「俺に一撃当ててこその成長だ」
だよなぁ。あれから今まで。未だに一撃も当てられてないんだよな。
溜息ついて肩を落としていると、アヤメさんはぽつりと呟く。
「……よく信じれるモンだな」
「……? ……ああ、紅目ですか?」
俺の言葉に、アヤメさんは頷く。
──紅目が敵かもしれない、そう聞かされた俺の答え。
〝そんな訳がない〟。
俺は、エルじゃないけど自分で見てきた紅目を信じる。
仮面付けた怪人みたいなヤツでも、俺の過去には不可欠な存在だったんだ。
助けてくれたんだ。
だから俺は信じる。信じるというより、敵じゃないって思う事にした。
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